4月。新たなる年度のはじまり。
なにか実生活で動きがあった人もなかった人も、春の気候に慣れてきたような4月後半の日曜日。
下記の内容でオンライン読書会を開催しました💻
日時:2021年4月25日(日)10:30ー12:00
場所:ZOOM
参加者:4名 男 2 女 2
お題:宮下奈都🐑🎹「羊と鋼の森」
今回は、昨年コロナが県内でも出始めたりと、そのまま流れていた「羊と鋼の森」のリトライです。4月4日はピアノ調律の日ーーというのが選書のポイントですが、私は音楽はからっきしで、幼稚園の鍵盤ハーモニカの時点で終わってる。
そんななか、他の参加者の方々は、最近国際的なピアニストの演奏聴いたり、お家にピアノがあったり、音楽活動でピアノの音には慣れていたりと、この作品を楽しめる土壌が豊かな方ばかりでした。いいなぁ。
全編を通して「静か」「静謐」「森の中を進んでいくよう」といった感想が全員の共通認識としてありました。
ピアノの調律についても、演者は「もっとこう高い感じ」「熱くなるような」と抽象的な言い回しでリクエストしてくるのに対して、調律師はヘルツ数とか、こっちを強めに調整・・・と理詰めで作業する。一段飛ばしに身につく技術はなく「こつこつ」やっていくしかない。
ちょっと嫌味なタイプの秋野さんなんかは「こうやっとけばいんだよ」とスピーディにやっちゃうけど、別に手を抜いてるわけではなく、それだけ正確にチューニングできる技を持ってる。
フルチューンやれるだけの技量あっても、仕事で請け負った時間(作業賃)のなかでベストとはなんなのだろう。
迷える子羊、専門学校を出て楽器店に就職・調律師デヴューした外村くん。
作中でも「がんこ」とか「めんどうくさい」と表現される彼の音に対する姿勢なんかも話題となり、小さい頃から音楽に親しんでいなかったからこそ、ピアノのなかに風景が見えている。師匠の板鳥さんなんかは、同じ調律をしても、たぶん別のものが見えているのでは。
純粋だからこそ、彼は「めんどうくさい」と思われるほどピアノに向き合う。
などの意見が述べられました。
凝り性の人、って程度にもよるけど、やっぱ「めんどうくさい」ですよね。外村くんは楽器店の社員だからいいけど、フリーでやってると、ほんとうにこだわって「まだ納得してないんで」と規定時間オーバーしても帰ってくれなさそう。預かって、できあがったら連絡しますね! といった類の楽器とは異なりますからねピアノは。。。
身近にあった石や樹、そして動物の骨や皮、毛や腱を用いて作られてきた楽器。作中でも現代的なピアノがいつ頃いまの形になったのか、やハンマーに使われるフェルトなんかのエピソードが出てきます。この辺は素直にへぇ・・・となるトリビアかな。
ピアノの弾き方なんかについても、音楽に造詣のある方からいろいろなお話を伺えました。同じピアノでも、クラシックとジャズではまったく異なる。「食べていく」ことを念頭におくなら、早い時期でのジャンル転向も考えなければならない。
このお話を聞いた時、餌場を求めてとぼとぼと歩いてゆく羊がたどり着いた先は、食い散らかされた荒野・・・を割合ガチに幻視しました。市場競争におけるブルーオーシャンとレッドオーシャン。草原だけど。
「食べて」生きてゆくことについて、外村くんがほのかに想いを寄せる女子高生(20そこそこの青年とティーンなら、ギリセーフ?)が語るピアノ「を」食べていきていく、という考え。この辺は宮下先生も作家志すときになんか思うところあったのかな。
羊で食べていけると思ってんの? 羊を食べて生きていくんだよ。ジンギスカーン!
今回のお題にして、久々の再読でしたが、やっぱり本屋大賞に選べられるだけあって名作ですね。この翌年の受賞作が「蜜蜂と遠雷」だったことへの目に見えないアシストにもなっていたのでしょうか?
ご参加いただいた皆さん、ありがとうございました!
【エンディング】 ショパン 「子犬のワルツ」
個人的に印象深いシーン。引きこもり気味の青年宅、ほったらかしにされたピアノを調律し、弾いてもらったところで、子犬が踊るヴィジョンが外村くんの脳裏に浮かぶ。
【 おすすめ本 BOOK 2nd 買ってってね 】
●装填つながり。直木賞候補にもなった、少女が出会ったウールの世界。伊吹先生は次回のお題本の著者でもあります。
●ベテラン熊谷先生も、ピアノ調律師の作品書いてる。こちらは「共感覚」で音で色や臭いを感じる。
●師匠が目指す調律は「原民喜の文体」だとか。読んだことないので、いつかは手にとってみたい。
★次回は 5/16(日) 10:30-
伊吹有喜🐶「犬がいた季節」をとりあげます。
地方の公立高校に迷い込んだ、白い子犬「コーシロー」。
在学生有志の「世話する会」も発足し、多くの生徒たちの友情や恋、甘酸っぱい「青春の香り」が鼻腔をくすぐる。
昭和の終わりから平成、学校に【住み着いた】犬と、学び舎を巣立ってゆく【卒業生】たちの思い出(メモリー)。
犬のモノクロ視点から、セピア色の最終章「犬がいた季節」まで一気読み必至の連作短編。惜しくも本屋大賞は逃しましたが、3位入賞と大金星。ページをめくり、かつての高校生活にトリップしてみませんか。
羊と鋼の森 > 本屋大賞 > 候補作 > 羊 > 白いモコモコ > コーシロー > ピアノ > 学校 > 卒業式 > 犬がいた季節
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レポート作成:はじめ