新年第1回となる、課題図書型読書会 2nd Memory が下記の内容で開催されました。

 

 

課題図書:「蟹工船」

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会  場:珈琲哲學 高松店 14時ー16時

参 加 者:6名(男3・女3)スタッフ含む

 

 

プロレタリア文学の代名詞とも呼べる今作ですが、冬になにかと食べる機会の多い「カニ」と絡めて課題図書に設定しました。

 

 

凍てつく北海で、荒波と格闘しながらカニを捕らえる男たち。現場を仕切る監督による暴力は日常茶飯事。逃げ場のない、劣悪な労働環境ーー数年前、世の中に「ブラック企業」なる言葉が認知されはじめた頃、ブラック企業が現代の「蟹工船」だとして、爆発的に読まれた作品です。

 

 

昨年のうちに、ありがたい事にすぐに定員に達したのですが、開催前日に列島に寒波到来。
メディアで報道される各地の積雪映像に、もしも雪が積もったら延期もやむなしか……と思っていましたが、なんとか積雪はまぬがれました。小説の神様ありがとう!

 

窓の外に粉雪が舞い、その向こうに巨大なカニのハサミが見える・・・作品世界と現実がリンクした状況で読書会はスタート。

 

ページ数は少ないが、比喩表現が多い、擬音語、たとえば「ゴロゴロ」なら「ゴロへ」というように昔の表記方法がやや読みづらかった、等の感想がありましたが、ストーリー自体は頭に入ってくるという点は共通していました。

 

作者が特高警察に拷問にかけられたのは「わかりやすい」という点も少なくないのではと思いました。難解で一部の人にしか読みとれないのではなく、多くの人を感化させる文筆力というのが恐れられたのかもしれません。

 

作中においても、恐怖で船内を掌握する監督が、外部から新たな思想が流入するのを警戒している事へリンクして読めます。

 

ノミやシラミといった、現代ではあまりお目にかからない虫を体にまとわせた蟹工船の船員たち。
「不潔」な描写の連続ですが、果たしてこのような場所で加工された缶詰を食べるであろう消費者は・・・。

 

サボる、という言葉もサボタージュ、れっきとした労働争議のひとつだ! 環境改善を求めて、こうなったらストライキ決行も止むなし! といった熱い労使闘争は日本ではあまり聞きませんが、誇張でもなく作中で描かれたような労働の歴史がかつてあり、また昨今、長時間労働による過労自殺など、過去の轍を踏みつつある出来事も注目を集めています。

 

なにかの「労働」をテーマにした小説というのは多く、都会でスタイリッシュなファッションに身を包み、デザイナーズマンションに暮らし、優しい同僚に囲まれ、恋と仕事を両得するような「お仕事小説」というジャンルが現代においては歓迎され、創作物をきっかけに職種に興味を持つ。私も「お仕事小説」決して嫌いではないのですが、「蟹工船」のようなハードな小説もまた読み継がれていくべき作品であると考えます。

 

学生時代に読んであまりピンとこなかった人なんかも、働きだした「いま」読むと何か新たな発見が得られるかもしれません。ネットの「青空文庫」でも読めますので、『おい、地獄さ行ぐんだで!』からはじまる冬の物語に想いを馳せてみるのも一興かと。

ボイルしたカニを思わせるオレンジ色。

ボイルしたカニを思わせるオレンジ色。

読書会帰りに県立図書館に寄ると、残雪が。 レインボー辺りは路面凍結とかあったみたいですね。

読書会帰りに県立図書館に寄ると、残雪が。
レインボー辺りは路面凍結とかあったみたいですね。

カニもどきがあらわれた!

カニもどきがあらわれた!

蟹工船3

・・・カニを食べたくなったので、今晩は水炊きをしました。。。

レポート作成:はじめ

 

 

★次回は2月19日(日) 阿部智里「烏に単は似合わない」を取り上げます。

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今年は酉年。朝チュン、どころか「コケッコッコー」と高い声色で夜明けを告げる鶏。

日本神話においても「常世長鳴鳥」として登場しますが、同じ太陽をモチーフにした霊鳥として、三本の足を持つ「八咫烏」も忘れられません。

 

サッカー日本代表のユニフォームにも描かれるこの霊鳥。神武東征のエピソードで、新天地への導き手として描かれます。たちはだかる強敵たちを倒して手に入れた新天地ーー勝利の導き手として、サッカーでは採用されているみたいですね。
2月の祝日「建国記念の日」は、八咫烏を天より遣わされた神武天皇が即位した日とされており、これと絡めての選書です。
日本神話では一羽しか登場しない、この八咫烏の「一族」が住まう異界を舞台にした小説。
新たなる王の「后」の座をかけ、東西南北、4つの大貴族の家より大奥とも呼べる女の園に文字通り「舞い降りた」4人の后候補たち。家の威信をかけた女同士の戦い。元がカラスだけにクレバーな頭脳バトル。果たしてクィーンの座は誰のものに!?
ファンタジー作品にして、最年少の松本清張賞受賞作。読了したときに、なぜ受賞したのかが分かる、これからの国産ファンタジー界を牽引していくであろう若き才能溢れる一冊!

 

 

次回は実験的に10人座れる会場を押さえてありますので、多くの人に参加してもらいたいです。