世界の名作を読む読書会~Season7 #2

開催日時:令和2年11月23日(月・祝)10:00~11:30
開催場所:Zoom
課題本:アナトール・フランス(大塚幸男訳)『神々は渇く』

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開催報告が遅くなってしまいましたが、昨年11月に開催した様子をご紹介します。

作品全体の感想として、「独りよがりの低劣な正義感を振りかざし多くの人々を処刑に導いた青年の単純さ、愚かさを通じて、フランス革命の恐怖政治時代を厳しく論じた名作」というお話がありました。

作者アナトール・フランス自身は、次のように語っています。「わたしの主人公ガムランは、ほとんど化物のような人物だ。しかし人間は徳の名において正義を行使するにはあまりにも不完全な者であること、されば人生の掟は寛容と仁慈とでなければならないことを、わたしは示したかったのだ」(387頁) と。作者が読者に伝えたかった核心部分がまさにここに凝縮されているという意見がありました。

この作品で注目されるのは、エピクロス派と思われるブロトという人物でしょう。作中では零落して操り人形の製作で辛うじて糊口をしのぐという悲惨な生活を送っていますが、数々の至言を吐いています。

「わたしは理性を愛してはいるが、狂信的に愛しているわけではない」とブロトは答えた。「理性はわれわれを導き、われわれを照らしてくれる。しかし理性が神と奉られるようなことになったら、それはわれわれを盲目にし、われわれに数々の罪を犯させるだろう」(90頁)

「人間をそうあってほしいと望む人間としてではなく、あるがままの人間として統治すべきでしょう」(148頁)

「革命裁判所には低劣な正義感と平板な平等意識とが支配しています、これがやがて革命裁判所を憎むべきもの嗤うべきものにし、万人に嫌悪を催させることになるでしょう」(165頁)

重いテーマで読み進めるのが大変だったが、今後もフランス革命の光と影の両面に着目したいという感想がありました。

参加者の皆様、どうもありがとうございました。

post by いのうえ

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次回の開催予定
1月11日(月・祝)10時~
会場:Zoom
課題本:ジョゼ・サラマーゴ(雨沢泰訳)『白の闇』
参加申込はこちら⇒「参加申し込みについて」

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