ついに今年も残すところ僅か。ラジオをつければたいてい誰かが槇原敬之の「冬がはじまるよ」をリクエストしている。

外歩く時は上に一枚羽織る…そんな冬の足音を感じさせる日曜の昼下がり、下記の内容で読書会を開催しました。

日時:2019年11月17日(日)14:00ー16:00

場所:Webase高松

参加者:4名(男2・女2)

課題:佐々木丸美「冬の断章」

今回は県外からーー中国、四国からの参加者は多いですが、関西からのゲストをお招きしての開催でした。

3年前に別の読書会でお会いした方で、今回課題の「雪の断章」をオススメしており、頭の片隅には私の中にもあったものが、今年の正月休みのときに本屋で平積み→ 一気読み、冬ということで11月の課題に決定! の流れです。

近年だと、青崎有吾が二度もリアルで紹介された事に縁を感じて読み、新聞書評で絶賛したことから一時は図書館予約待ちになったり、ビブリア古書堂の事件手帖でも登場したりと、ジワジワと再評価の流れがきている模様。

作品の発表時期は1975年。施設から裕福な家庭に引き取られた孤児の飛鳥を主人公にした物語。養女っても、その家には意地の悪い2人の娘がおり、寒い夜に濃縮還元メロンジュース買ってこいと無茶振りしたりと劣悪な環境…。私なら瓶の底に濃いのが残っているでしょうから水道水の蛇口捻ってシェイク→薄いけどメロンジュースできたで? …瓶でどつかれるコースですね。彼女に手を出して差し伸べてくれたのは幼い頃助けてくれたセレブの青年…青年の勤める会社の社宅アパートで、多くの若者たちから妹キャラとして愛され、やがていつまでも可愛い妹とではいられない、否、いたくない現実をつにつけられる…。

私の個人的な考えなのですが、同じ同人誌出身だったりすると必然的に互いに作品を講評しあって作風なんかが似てくる文芸的DNA、互いに見識がなくても住んでいる地域性もまた、文芸的DNAとして脈脈と受け継がれるーー三浦綾子や桜木紫乃、そして佐々木丸美、北海道出身の女流作家の作品を読むと、どこかズーンとした冬の寒さや、ストーブの上でピィーッ! と鳴くヤカンなんかを幻視します。厳しい寒さで常に暖をくべなければならないーー生きてるだけで消費し続けなければならない世界。そんな過酷な世界で掌に息を吹きかけ、体から熱を逃すまいと丸くなる貧しい少女の姿は涙を誘います。

そういったステレオタイプの北海道のイメージから話はやや脱線し、テレビドラマの「北の国から」の話題にもなりました。あれも清く貧しい北海道の姿というか、私にとっては「子どもがまだ食べてるでしょうが!」「お兄ちゃんお金返してないんだってよ!」とか色々と思い出深い作品であると同時に、DVDボックスもあるそうです。へぇぇ。

作者の佐々木丸美さんは既にお亡くなりになっており、10数冊の作品を残されました。この「雪の断章」がデビュー作品で、なんと以後の作品群はすべて同一の世界の出来事であり、この作品の登場人物たちも、ちらりと名前だけ登場したり、実はあのキャラとこのキャラは血縁関係があった! とか、ひとつの「サーガ」を形づくっています。そしてDVDボックスじゃないけんど、愛蔵版ちうか全集があるそうです。

私は良き姉役として相談に乗ってくれる人事部の厚子さん(見合い結婚で京都に嫁ぐ)に対してほのかな感情を描き、ラストあたりで飛鳥が神戸に行くまいかどうか悩むところなんか、神戸と京都近いし、互いに旦那の愚痴を言い合うそういった未来もありえたかもなぁ…と思うと同時に、やっぱないかぁ、とも。

しかし、別にロリコンとまでは言わないけど、よその家で養子縁組されてる女の子を社宅で住まわせ、小学生の頃から知ってる女の子を高校あがったときに結婚相手として意識するとか、早婚が普通の時代でもちょっと…ねぇ?

孤児だから差別されるとか個人レベルで憎いとかではなく、社会全体への自らの誇りをかけた復讐、やや意固地な所も感じられるけど、施設のキャパが常にいっぱいいっぱいとか、荒んだ時代はしょうがないのかなぁ。

佐々木丸美作品の中では、これが一番男女の愛情が深く描かれているそうで、他の作品は女より仕事!といったビジネスマンタイプの男や、1人の女だったが影というか分身というか2人になっていたり、生まれ変わりが存在したり、後続作品は少し不思議な設定だそうです。オカルトパワーで人を殺せば青酸カリはいらない! 前述のようにすべての作品は同一の世界…この「雪の断章」は北海道文芸の王道のような展開だけに、設定のギャップもあり他の作品も手に取りたくなりました。

現代作家だと桜庭一樹がマルミストというか佐々木丸美作品の影響を強く受けており、「私の男」は桜庭一樹版「雪の断章」でありサーガは「赤朽葉家の伝説」で試みている。

目から鱗の新情報をたくさん得られた、有意義な回でした。

遠方、近隣からご参加の皆さん、どうもありがとうございました!


開始前にルヌガンガに寄ると、チーズケーキがラス1。うめぇ。もっとるのう、ワシ。

今年ラスト&遠方ゲスト、お昼にうどんは召し上がったということで、だったらこれも食べて帰ってもらわんと!
一鶴で皆んなで打ち上げ夕食。16時過ぎ入店、前に1組待ち、気付けばぞろぞろと後ろに雲集列を成す…グッドタイミング、もっとるのう、ワシ…。ノンアルじゃがビールと骨付鳥うめぇ。

佐々木丸美関係の雑誌や新聞記事のコピーをいただきました。話題が尽きず大いに盛り上がりました。感謝!


★次回は年明けて1月、

せっかく北海道に来たのだから、もうちょっと滞在しようということで、吉村昭の「羆嵐」を取り上げます。


昭和初期、12月。北海道の開拓村に突如として現れた、冬眠を忘れた羆。人間の味を覚えてしまい、エサのためなら、もはや火や銃を恐れないビースト。

大自然の化身、荒ぶる神(カムイ)の血風吹き荒ぶ爪牙を前に人間はなすすべはないのか?

 日本最大の獣害事件である「三毛別羆事件」を取材し、史実に基づいた激動のビーストパニック小説!

来年の開催のため、まだ日程が本決まりではありません。最速の開催案内はメルマガでのお知らせになりますので、未登録の方はこの機会に是非。


バーナード嬢曰く、にも登場!


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レポート作成:はじめ