天気予報では寒くなると言いながら、実際はぽかぽか小春日和の日曜の午後、課題図書型読書会 2nd Memory が下記の内容で開催されました。

課題図書:「烏に単は似合わない」
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会  場:高松市郊外の飲食店 14時ー16時
参 加 者:5名(男1・女4)スタッフ含む

 

節分も終わり、暦の上では「春」となりました。今年の干支、酉(とり)をからめての選書です。

 

烏が主役の本だけに、今回は黒一点でした。カラスは黒いから英語でクロウ! 海豚(イルカ)はドルフィン、鯱(シャチ)はオルカ!

そして、はじめて利用させていただく会場にて、初参加の方を2名お迎えして開催しました。ダブルフレッシュ!

 

八咫烏たちの一族が住まう異界・山内。次の王である、日嗣の御子(若宮)の后候補として集った四大貴族の姫君たち。

 

春夏秋冬をモチーフにした宮殿の主として、切磋琢磨するはずだった彼女たちが行うのは家の威信をかけた壮絶な女の戦い。磨いて高めあうというよりも、削って足の引っ張り合い。

 

疱瘡で登殿出来なくなった姉の代打として、修羅の庭に舞い降りた可憐なる春殿の主・あせびを中心にして描かれる百花繚乱のファンタジー。

 

無知を嘲笑されながらも、前向きなあせびの姿は、さながら朝の連続テレビ小説のヒロインのよう。やがてドロドロの昼ドラ展開になり、気がつけば怒濤が押し寄せる断崖絶壁にて、ラスト20分謎解き展開に入った火曜サスペンス劇場。「あなたの予想を裏切る」の煽り帯に偽りなし。

 

これからの国産ファンタジーのエースと目される著者・阿部智里がこの作品でデビューしたのはなんと20歳。

 

5作目「玉依姫」の原型は既に18歳の時に完成されていた事からも、その創造性の高さが非凡なものであるのがわかります。

 

平安朝風の物語ですが、源氏物語を原著で読むという参加者の方から、服装や持ち物の名前などから影響がうかがえるとの発言もありました。

 

ファンタジー作品というと、暮らしている種族や文化といった壮大な世界観に比例して、ページ数も多くなったりと、なかなかとっつきにくいイメージを持つ方もいるでしょうが、この作品は非常にスラスラと読めます。

 

まず、「山内」という広大な異界にありながら、舞台となるのは後宮に準ずる、女たちの園・宮中の一区画(一種の密室)であり、姫君たちの「家柄」を含めた家系図と地図が巻頭に記されているので、世界に入りやすい仕組みとなっております。

 

ただ、ファンタジー作品として面白くとも、「松本清張」のイメージ=ミステリーとして捉えて読むと、それほど。。。となる場合もあります。(松本清張賞は特にジャンルを限定せず、大衆小説に広く門をあけている賞ですが、やはり読者の期待もミステリーに傾きますよね)

 

しかしながら、特定の姫君に感情移入するというよりも、俯瞰するような立場で読んだという意見が多く、登場人物の謎を見守るミステリの読書感と通ずる部分もあるようです。

 

・・・私は男なので、姫君にシンクロするよりも、モッテモテの若宮やバッキバキのエリート武官・・・は無理ながら、ある種のキーマンである「下男」には少し寄り添うような気持ちも。。。

 

あせび(天然)浜木綿(男勝り)真赭の薄(派手令嬢)白珠(地味)のキャラクター像についても、程度の差はあれ「どこにでもいる」女子像だと語られました。綺麗な女の子は、自分が綺麗な事を自覚して、それ相応に振る舞う。自覚と無自覚の境・・・興味深いですね。

 

私は消去法的に地味目の白珠を応援してましたが、若宮の妹姫であり、あせびを姉と慕うザ・妹キャラの内親王・藤波も嫌いではない。

 

彼女がなんであせびを猛プッシュしていたのか、私には読んでもさっぱりわかりませんでしたが、あっさりと参加者の人に答えを出されました。うううむ、女心は複雑に見えて明快な部分もあると驚き。

 

いまはたいていどこの書店でも、平台で展開されている事が多いこのシリーズ。季節は春からはじまり、一巡して春に戻るこの「烏に単は似合わない」これからの季節にぴったりの一冊ですので、ぜひ手にとってみてください。

 

 

ご参加の皆様、ありがとうございました!

Ka2

文庫版=顔出しNG 単行本=顔出しOK 4作目「空棺の烏」の文庫版が出た時に、この法則が適用されるのかゴクリ。

Ka1

八咫烏ジャージ・黒いネクタイ、カーディガン、パンツ、靴、時計で臨みました。 ジンジャーエールじゃなく、ブラックコーヒー飲めばよかった。。。

★次回は3月19日(日) サン=テグジュペリ「星の王子さま」を取り上げます。
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※他にも様々な版元より刊行されておりますが、どこのものをお持ちいただいてもかまいません。

 

 

3月はひな祭りがあるので、そこからひな流し→貴種流離譚のイメージで、本作を取り上げます。

 

(3月→サン月→サン=テグジュペリからの連想もありますが)

 

奇しくも「烏」にも庶民と貴族との「ひな流し」の差異が描写されておりましたね。

 

サハラ砂漠に不時着したパイロットが出会ったのは、「ちいさな王子さま」。

 

彼がパイロットと出会うまでに訪れた、様々な星での出来事。

 

本を読んだことがなくても、イラストはどこかで見た事があるはずーーなんとテグジュペリさんは絵もいける口。

 

いまより航空技術が発達していなかった時代、一歩誤れば「死」に繋がる「空」をパイロットとして旅した著者が操縦桿をペンに持ち替えて記した、たましいの物語。

 

「大切なものは、目では見えない・・・・・・」

 

開催日は3月19日ですが、2日後の3月21日からはじまる12星座の「牡羊座」。

 

春の夜空に、「ひつじ」座はいないのですが、夜空のどこかでかがやく王子の星に想いを馳せて。

 

 

レポート作成:はじめ