緊急事態宣言も解除され、ひとつの大きな山を越えた感じでしょうか。

閉鎖されていた施設も解放され、量販店にマスクが戻り、連日の感染者数も一桁台、気を緩めたら第二波が来ると言われておりますが、早期終息を願うばかりです。

感染リスクがあるため、読書会フレンドパークでも対面の読書会は落ち着くまでお休みということで、5月からオンライン会議ソフトを用いての、ネット上での読書会を開催する運びとなりました。

実際のところ、ネットの読書会主催者界隈でも、このオンライン化は急速に進んでおり、これもひとつの大きな流れなのかもしれませんね。

日時:2020年5月23日(土)10:00ー12:00

場所:ZOOM

参加者:6名(男3・女3)

課題:小川洋子「密やかな結晶」

今回も2ndMemory初参加の方を3名お迎えしての開催でした。しかも県外から・・・これはオンライン読書会の強みですね。讃岐弁聞き取りづらかったら、すいません。。。

課題としたのは、夏に延期されてしまいましたが、5月18日に発表予定「だった」世界的文学賞であるブッカー賞にノミネートされている、小川洋子さんの「密やかな結晶」です。

受賞なりませんででしたが「全米図書賞」にもファイナリト入りし、ブッッカー賞でも最終候補。世界がオノ・ヨーコに続いてオガワ・ヨーコに恋する日も近い・・・?

2018年には石原さとみ主演で舞台化もされてるみたいです。観たかったなぁ。

さて本編は、不定期に訪れる「消滅」に見舞われる島で暮らす、女流作家の「私」の物語。
「消滅」の対象となったものは、必ず捨てなくてはならず、やがては人々の【記憶】からも完全に消去されてしまう。

禁制品となった、消滅の対象となった物を所持していたり、ごくまれに存在する記憶を失わないタイプの人間は「秘密警察」による記憶狩りで連行される、一種のディストピア小説。

次々と失われていく記憶、比例して少なくなる物資、秘密警察を怖れて息をひそめて暮らす人々・・・このコロナ禍で、ステイホームやマスク不足、果ては監視の目を光らせる「自粛警察」・・・「三密」なる言葉が叫ばれるなか、タイトルからして「密」やかな結晶【いま】こそ読みたい至近距離小説!

2ndMemoryでは「猫を抱いて象と泳ぐ」から始まり、「博士の愛した数式」「ことり」と、過去は5月に小川作品を取り上げていたり、英題が記憶を狩る秘密警察を訳した「The Memory Police」(policeは警察という意味と、都市という意味をかけたダブルミーニングかもしれないけんど、作中の描写では都市というより寂れた港町という印象)

2ndMemoryという読書会名でやっている俺がこれを取り上げないでどうするよ! と本来5月に取り上げる予定だった「遠野物語」を押しのけての緊急選書!

46回中、今回を入れて小川洋子作品は4作目とぶっちぎりの登壇数。マウンドを踏むエース投手さながら。

普段から小川洋子親しむ人はもちろん、ブッカー賞にノミネートされているから初めて手に取ったという人など、参加理由は様々でした。

95年の作品ながら、最近英訳され、そして評価されたと思えば小説の中と類似した世界が現実にーーっても「密やかな結晶」はユダヤ人狩りーーアンネの日記が根底にあるみたい。隣人を監視し密告、叩くような歴史はくりかえされる。

◉記憶が失われ、「新しい生活」となるも、意外とそれは、記憶があった頃に忘れられていたものが、失われた代わりに再び出てきた生活様式かもしれない。

◉「記憶の消滅」という現象は、自然なのか人為的なのか?(コロナ生物兵器陰謀説みたいですね)

◉結果的に略奪愛のような形に成った「私」と「R氏」の関係をどう思うか。

◉自分が失いたくないものは何か?

様々な意見や疑問について、みんなでがっつり語り合う二時間でした。

ブッカー賞の発表が夏に延期されましたが、仮に受賞した日には「もうすでに読んでいるよ」ドヤァ !  としたい人なんかにもオススメです。

ご参加いただいた皆さん、ありがとうございました!

「猫を抱いて象と泳ぐ」のテーマである「チェス」のTシャツ。

講談社文庫×クリエイターフェア 版のブックカバー。記憶の消滅をロウソクで溶ける頭で表現。

月刊アフタヌーンのある日常が帰ってきた。
「宝石の国」の作者である市川春子と小川洋子には、欠けてたり過剰だったりするものへの愛みたいなものを感じる。

初読のときに、なんとなく頭に浮かんだ作品。

40年前に記憶がごっそり抜けた記憶喪失の街、パラダイムシティ。ゴッサムシティもびっくり。THE ビブリオー。

★次回は6月21日(日)、オンライン開催にて「池袋ウエストゲートパーク」を取り上げます。

鋭く世相を切り取り、直木賞作家 石田衣良のデビュー作にして、現在も続く人気シリーズの原点。

家業の果物屋を継いだ青年、真島誠。

店番をする彼の耳に届く、池袋の街の様々なトラブル。ほんとうに耳にいれときたいのは、クラシック音楽なのだが、そんなノイズは同級生かつ、池袋のギャングボーイズを率いる氷の王様とともにさっさと解決してやるぜ。

7月にテレビアニメが放映開始予定、20年前に宮藤官九郎脚本でテレビドラマ化されたのが、6月23日最終回・・・上半期と下半期の境、終わりと始まりの交わる日、ウエスト・・・じゃなくてフレンドパークで会おう!



参加申込はこちら⇒「参加申し込みについて」

レポート作成:はじめ