だいぶ日が長くなり、日中は体感的に暖かくなってきた2月中旬、

下記の内容で、課題読書会2nd Memory が開催されました。

 

日時・2019年 2月17日(日) 14:00ー16:00

課題・小野不由美「十二国記 月の影 影の海(上・下)」

会場・森のカフェ

 

 

 

参加者・5名(男2・女3)

今回は複数参加している人の中で、はじめて顔をあわせる人がいる、というなかなか面白いシチュエーションが起こりました。同じ本を読んでいるだけで、話題には困らないのが課題読書会のいい点ですね。

 

そして、本作品のキーパーソンの名前が景麒だけにケーキセットがよく注文されていました。私はパフェ食べましたが。おっと、暖房つけようか。

 

昨年末に、新作が2019年に出版される事が公式アナウンスされるや、Twitterで一気にトレンド入りしたのも記憶に新しいニュースですが、今回の参加者さんは、この読書会がきっかけで手にとってくれた人ばかりでした。

 

ファンタジー好きな人は名前だけは聞いたことがある、というケースもあるのですが、まったく知らず、本屋でシリーズがズラズラ〜と並んでいるので驚いたという声も。

 

ファンタジー界隈だと、「精霊の守り人」上橋菜穂子「空色勾玉」萩原規子「十二国記」小野不由美の3人が、個人的な国産ファンタジーの宗像三女神。

私も敬意をこめて、小野主上 と呼んでいます。

 

 

私がはじめて読んだときは中学生で、主人公・陽子と同じく「少年少女」であり、陽子にシンクロして読んだりもしたのですが、年を経て読むと一歩後ろに引いた感じ——陽子に憑依し、戦闘の時はその体を操って陽子を守る妖魔・ジョウユウにシンクロして読みました。

 

主人の命令とは言え、自分を化け物扱いした少女(まぁ妖魔=化け物なんですけどね)をきっちりと守り抜くプロ意識。自分が敗北すれば、即ち可憐な乙女と主人が命を散らすという重圧…。

 

初読の4人の方のうち、男性と女性が1人づづ陽子にぐっとシンクロして一気に上下巻を読んだというケースと、女性2人は陽子にシンクロせず、俯瞰したような感じで読んだというケースに分かれました。

 

主人公の性別や年齢に近いかどうか、は作品に入り込めるかどうか、という点ではそれほど影響しないようです。

 

そしてこの作品、もとはヤングアダルトやジュブナイルと称される、今日で言うところのライトノベルの前身にあたり、そもそもは「少女向け小説」で、小学4年生くらいからの女の子が対象です。ラノベという点からなら、いま流行の異世界召還系で、最強の武器と回復アイテム、オート戦闘のチートアクセサリでフィジカルTUEEE! けどメンタルYOEEEE! ですね。

 

かつて陽子より年下だった少女らが、いまでは陽子を遥かに追い抜き——という点も感慨深いものがありますが、この「月の影 影の海」を語る上で、入り込んだ人が「つらい」と述べた上巻での陽子に襲いかかるネガティブな精神攻撃。ここまで人間のいやーな内面を描いた若年齢層対象の作品もないのではないでしょうか?

 

 

十二国記を人に薦めると、よくこの上巻あたりの暗さでギブアップを申し出る人が続出するのに対して、ファンが編み出した名言が「ネズミが出るまでがんばって!」

 

意味不明。行き倒れたところを齧られるようなシーンが目に浮かびますが、一服の清涼剤であるネズミは、下巻はじまってすぐに登場します。この辺の落差を描くために、文量的には1冊にまとめられるのを、あえて上下巻にしたのかなぁと思うところも。

 

なお、ファンの沼に引きずり込もうという計略において、半分足を踏み入れシリーズ数の多さに読み進めようかどうか迷う人には

「初勅まで読んで」

 

という言葉を贈り、そこまで読んだら人はたいていハマってしまっているので、新作の禁断症状に悩む同志には「中日(発売日)までご無事で」までが一連の流れとなっております。発売日に関して苦しむファンらは、麒麟の帰還を10年待ち、更には王が行方不明になってから5年さらに苦しんでいる戴の民らと自らを重ね合わせるがため、新作発売のニュースに狂喜するわけです。

 

 

剣や妖魔という点から、ゲーム的な印象も指摘されましたが、私なんぞは冒頭のポケモンのごとくケイキが妖魔を呼び出すシーンで中2心を掴まれた口ですね。あとほら、中2ぐらいだと難しい漢字とかけっこう好きじゃないですか。知らんがな。

 

 

入り込めた人も、入り込めなかった人も「異世界の風景」を巧みに描写する作者の筆力に対する意見が多かったです。

 

また、下巻の解説にもあるのですが、差別や紛争といった、大人の目線で読んでも現実社会に照らし合わせて読める部分が多いのもポイント。

 

 

 

 

平成初期にはじまり、次の年号にまたがってゆく超大河シリーズ。平成は31年で終わるので、後世に「平成の文芸史」がまとめられると、ファンタジーというジャンルでは引き合いに出されること間違いなし。

 

これだけのロングセラーだと、2019年の新作も、全国でなるべく発売日に買えるような別ルート物流(ワンピースとか三月のライオンとか)で発売される期待も高く、「いま」読んでおけば、流れに乗れること間違いなし!

 

 

 

 

ご参加いただいた皆さん、ありがとうございました!

 

 

 

 

あと1人参加してたら「12」冊だった・・・惜しい!

会場は2階の個室を予約しました。おっしゃれー!

傘を持つネズミ・・・最近高松のスケボー場でも発見されましたね。

陽子の髪のごとく真紅に輝くパフェ。うめぇ。今週健康診断控えてますが「食っちまえよ、食いたいんだろ?」「ここは個室だ。誰も見ちゃあいねぇよォ」「いまさら食事制限しても無駄。ストレス貯めると逆に毒だろうが」「旬に食わないでどうするよ?」と正論で責め立てる内なる声に負けました。でもうめぇので後悔はしていない。

 

3/2 に岡山県総社市で開催されるビブリオバトルに参戦します。観戦も事前申し込み制です。

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★次回は3月24日(日)14時ー

ケン・リュウのSF短編「もののあはれ」を課題とします。

※課題作品はこれらの短編集に収録されている「もののあはれ」とします。

昨年の3月に課題にした、同著者の「紙の動物園」に続いての課題選書です。

 

昨年が「幻想モノ」に対して、こちらは「SF」。単行本としてのトップバッターは譲ったものの、日本に始めてSF雑誌に邦訳で紹介されたのは「もののあはれ」。

 

中国生まれ、アメリカ育ちの著者が描いた、未曾有の大災害に対して我々「日本人」がとった姿。やや美化されすぎな気もしますが、この作品が書かれるに際し、少なからず311の時に世界に報道された映像も影響を与えているのかな? などと個人的には思います。

 

非常に短い短編なので、課題読書会ってなんか読み切っていかないといけないから敷居高いな、という人も手に取り易いと思いますよ。

 

中華ファンタジー → 中国産作家書いたSF

参加申込はこちら⇒「参加申し込みについて」

レポート作成:はじめ