暑さ寒さも彼岸まで——と言いますが、異様な寒の戻りもあれば、高知で桜が満開になったりとした、3月第3日曜日、

 

下記の要項で課題図書型読書会2nd Memoryが開催されました。ちなみに3月18日は今年の彼岸の入りでした。おいりを食べよう。

 

課題図書:「紙の動物園」
[amazonjs asin=”4150121214″ locale=”JP” title=”紙の動物園 (ケン・リュウ短篇傑作集1)”]
日  時:2018年3月18日

会  場:珈琲哲学 高松店 14時ー16時

参 加 者:6名(男3・女3)スタッフ含む

 

満席御礼! 画像はあえてあげませんが、虎ジャージ、虎靴、虎リュック、虎時計ベルトと虎で固めていきました。特別に贔屓の球団があるわけではないのですが・・・。

 

 

 

数々の文芸賞を総嘗めにした、中国出身の米国育ちという異色の経歴を持つケン・リュウの傑作短編。
 
又吉がTV番組で紹介したことで日本では火がつく中で、やはり取り上げるとすれば表題作である「紙の動物園」という事で、課題に選びました。受賞歴もそうですが、米国で既に何十篇もの短編が上梓されている中で、日本に紹介するはじまりの一篇、いわば切り込み隊長として早川が選んだ作品であるからには、読者としても敬意をもって遇せねばなりません。
 
英語の原著では、紙の動物園は本のなかほどに収録されているそうです。日本ではトップバッターをつとめ、一番打者からホームランをかっとばしてくれます。
 

ケン・リュウという作家はジャンルとしてはSF作家に該当するのかもしれませんが、ファンタジー色の強い作品も強みとしており「紙の動物園」も幻想作品となっています。
 

もっとも、ファンタジー色は「命を吹き込まれた折り紙が動く」という事だけで、あとは人身売買や人種差別といったヘビィな内容を描いており、著者の実体験も反映されていると思われます。

 

どこか頼りない米国人の父、異国で差別され、挙げ句息子にまで蔑視される中国人の母。ハーフで母親譲りの容姿からいじめを受け、自らに流れるアジアの血を疎う息子。この3人の誰に寄りそうかでかなり感想が変わってくるであろうこの作品。

 

参加者の皆さんも色々と思う所があり、話題の絶えない2時間でした。内容は20pぐらいのすごく短い短編なのですが、ギュッと濃縮するのはケン・リュウの筆力の賜物でしょう。

 

私なんかは、かつての反抗期時代を思い返し、息子に対して「あー、わかるわかる」というスタンスでもあるのですが、大人の目線で読めば、「なにお母さんにそんな口きいてんねん」と後ろからはたいて説教、ついでに父親も「嫁さん守るのがおめーの仕事だろうが!」と説教、家族皆で肩組んでウィーアーザーワールド歌わせるまで説教終わらない……展開を夢想しました。

 

他にも参加者さん自身の反抗期、あるいは息子さんの反抗期のエピソードなどが話題にあがりながらも、やはり「母の愛」が詰まったラストの手紙のシーンなんかは、皆さん印象深いようでした。

 

日本人が書けば、すごく綺麗にまとまったかもしれないのを「あえて・・・!」あのような展開にさせたのは、是非未読の方にも体験して欲しいですね。

 

「愛」という点では、お父さんとお母さんの間に「愛」はあったのかーーもしかしたらお父さんは別に家庭を持ち、中国人の母は「2号さん」ではないかーーという考察も。

 

カタログ(容姿)で結婚相手を選ぶという行為などから、昨今のお見合い事情なんかにも枝葉が伸びました。私も最近婚活してるので、まぁ、あれですわ・・・でかでかと写真表示されて、そっから取りあえずコンタクトとるかどうか決めるので・・・えぇ。

 

そして、未来の話として、これからの時代にこういった異国からの妻、混血の子ども達というのが増えてくるのではないかという話題にも。
 
そういった人々と手を携えて生きていける世の中になればいいですね。「紙の動物園」では、異郷に嫁いで来た中国人の母の周りには、同胞はおらず孤独に苛まれ、病気になった原因のひとつは恐らくその辺のストレスであろう事も容易に想像できーー救いがあるようなないような余韻のあるラスト、ふと立ち止まって考えてみれば、我々も体験しうるかもしれない世界・・・ファンタジーの体をとり、白人の有色人種への差別のリアルを描いた良書だと思います。
 
何度も書いてますが、とても短いので是非トライしてもらいたい1作です。虎だけにトライってか?

 
ご参加いただいた皆様、どうもありがとうございました!

 

★次回は4月15日(日)季節は春、という事で桜の表紙絵が美しい住野よる「君の膵臓をたべたい」を取り上げます。

 

[amazonjs asin=”4575519944″ locale=”JP” title=”君の膵臓をたべたい (双葉文庫)”]


教室の隅で小説を読んでいた孤独な文学青年の高校時代のメモリー。
 
膵臓病でやがて死ぬと語るクラスメイトの美少女との日常生活。
 
ふたりの距離はゆっくりと近づき、やがて此岸と彼岸に別れる。
 
タイトルである台詞が出てきたときに漏れる読者の嗚咽。
 
2010年代の文芸シーンを語る際に、必ず引き合いに出されるであろう恋愛小説!
 
ありがたいことに、既に定員は埋まってしまいましたが、僅少の増席が可能な場合もありますので、後の申し込みは個別にご相談ください。

参加申込はこちら⇒「参加申し込みについて」

レポート作成:はじめ