温暖な香川県に大寒波が襲来、はたまた極寒の平壌五輪が燃えている2月第3日曜日。

 

下記の要項で課題図書型読書会2nd Memoryが開催されました。銀盤の上で羽生選手が舞い、棋盤の上で藤井プロの妙手炸裂と「天才青年&少年」が盛り上がった週だったように思います。

 

課題図書:「烏は主を選ばない」
[amazonjs asin=”4167903830″ locale=”JP” title=”烏は主を選ばない 八咫烏シリーズ 2 (文春文庫)”]
日  時:2018年2月18日

会  場:珈琲哲学 高松店 14時ー16時

参 加 者:6名(男3・女3)スタッフ含む

 

満席御礼! 2ndメモリー、2月開催、22回目、シリーズ第2作、主人公は次男坊と2が並んだ回でした。

 

 

課題としたのは、人の形をとった霊鳥・八咫烏の一族が住まう異界「山内」を舞台とした和風ファンタジー、八咫烏シリーズの第2作目。1作目「烏に単は似合わない」と同じ時間軸、ほとんど登場しなかった皇太子、若宮は何をしていたのかを、近習に取り立てられた少年、雪哉を主人公にして描きます。
 
八咫烏は2月の祝日「建国記念の日」に関係のある、神武天皇東征のエピソードに登場する霊鳥です。将棋の天才少年藤井プロが出て来るまで、様々な最年少記録をもっている加藤一二三九段は「神武以来の天才」と呼ばれていました。
 
あと、あんまり関係ありませんけど、カーリングってなんとなくカラスの置き石とか、自動車利用して木の実を割るのに似てませんか? ルールよくわからないんですけど、石がゴーっと滑ってきてガッコンとおはじきする様が癖になるというか。
 
さて。
 
物語は北の地方から、都たる中央・皇太子の側仕えに抜擢された少年、雪哉が主人公。白い雪原を舞うカラスとか幻想的ですねーーもっとも貴族は人型から鳥の姿に変身するのを恥とする風潮があり、スーパーセレブたる姫君たちも烏にはならないーーというのが前作「烏に単は似合わない」で、謎解きの鍵のひとつにもなっていましたが、武人の類は空中戦もこなし、切った張ったの暗殺未遂がばんばん起こるために変身するシーンも多く出てきます。
 
遠くからやってきた主人公が、導き手(メンター)の教えを得て、再び郷里にかえってゆくーー、物語の古い型にはまった通りの「王道」なのですが、最初の方で仕掛けられたトラップに私なんかはまんまとハマり、最後の謎解きで「えぇぇ」となった口です。羽生くんもびっくりな氷の貴公子(プリンス)。
 
敵対するキャラクターたちも、言い分は、その信条に則っているならば決して間違ってはおらず、それぞれの所属する場所、役割に対しては徹している。逆に雪哉は若すぎる部分もあるのか、自分の持つ複数の側面に対して、一方だけの役割を求められては「ふざけるな」と一蹴。タイトルにあるような選択をして、都を去ってゆきます。
 
ある種、主である若宮と兄弟間でのお家問題を抱えていたりと、似た者同士なのですが、別個の存在としてのキャラ立ちは強い印象です。個人的には若宮の兄、長束の護衛を勤める仁王の如くマッチョな路近が好きです。南に連なる家の出ながら、尚武の気風のある北の地でもなかなか見ないような偉丈夫、長束派というよりも路近個人についていく山内衆もいる、とか頼れる兄貴分というか。体格的にも雪哉が指標とすべき武人はシャープな澄尾センパイなんでしょうが、汚れ役を厭わない路近もまたひとつのあるべき姿、憧れというか・・・。雪哉のイメージはなんとなく神木隆之介、若宮は福士蒼汰、そして路近は鈴木亮平。。。
 
能あるなんとかは爪を隠し・・・直感像素質など、ハイスペックな雪哉から少し脱線し、ラジカセが出始めた頃の誰が使うのかよくわからないマイクなどの拡張端子、再生だけに特化したウォークマンの革命などの話題も出ました。なんとなく巻末の馬鹿な奴だな→馬鹿の方が賢い事もあります、のくだりのような。あとこれを書いてて思ったのが、馬鹿な奴だとこぼしたのは意外に雪哉と実は○○○な関係だった喜栄あたりなのかな。
 
作者の阿部智里先生のファンタジーの原体験が「ハリー・ポッター」シリーズにあることから、ハリー・ポッターを子どもの頃に読んでいた世代が、新たなるファンタジー世界を創造する時代になってきているんですね。将来的には八咫烏シリーズを読んだ世代が、別の物語を記しはじめたりも・・・? 勝手に二次創作でレイブン・クロー寮生から全学年に飛び火し、「フクロウの時代は終わった、これからはヤタガラスだ」と東洋の三本足カラスがペットで大流行! ・・・ないね。
 
宮中ファンタジーのテイストは、オール讀物の大先輩でもある夢枕獏の「陰陽師」の影響もあるみたいです。男子フィギュアスケートの羽生くんなんかも音楽、服装と陰陽師インスパイアですよね。
 
6作ある第1部のなかで、雪哉は2/3にあたる4作品で主役級の扱いを受け、全体を通して少年から青年へと成長してゆくキャラクターです。そういった意味では、雪哉の物語としては、この「烏は主を選ばない」が1作目とも言えるかもしれません。
 
3作品目では、外敵の侵攻、4作品目では学園ファンタジー、5作品目ではスピンオフと見せかけたアウトフレーム解明、そしてフィニッシュの6作目と、次々と万華鏡のごとくストーリーが変幻するのがこのシリーズの魅力でもあります。
 
今年の5月には短編集が上梓され、その次に第2部スタートが控えており、まだまだ先が見逃せません。
 
すごく個人的な願望だと、短編集発売にあわせて近県でサイン会・・・せめてサイン本の発売があると嬉しいのですが。。。
 
香川県・・・文藝春秋の創設者、菊池寛の出身地。また宮脇書店ではミヤボンにランクインし、様々なPOP展開。。。東京から書店に営業さんが来る時に何冊かどうにかなりませんか?(知らんがな)骨付鳥。
 
徳島県・・・阿部智里先生の阿は阿波の阿。紀伊水道の向こう側、和歌山には八咫烏でおなじみの熊野が。。。阿波尾鶏。
 
愛媛県・・・可憐なる媛神の名を冠する県。ミカンも有名ですが、「烏は主を選ばない」で雪哉がさんざん若宮から賜る金柑もまた名産品。
 
高知県・・・ええい、これでトドメだ! 土佐「山内」家! 内助の功、浜木綿さま! もともと青年神ですし、屈強精悍な山内衆のイメージにも重なりますね。土佐ジロー。雪哉は次男。
 
 
長々と書きましたが、人気シリーズゆえ、書店でよく見かけると思うので、興味のある人は是非手にとってみてください。
 
ご参加いただいた皆様、どうもありがとうございました!
 

色々な帯+著者サイン本。見えにくいですが、落款入り。私も欲しい。。。


 

参加者さんが持って来てくれた、非売品うちわ。香川県によくある、おむすび型なんですね、山内の中央は。


 

参加者さんが持って来てくれた、非売品の手ぬぐい。五作目、「玉依姫」のですね。しっぽふっていますが、読んでみると・・・おおう。


 

★次回は3月18日(日)お彼岸の入り、という事で中国の死者を祀る清明節がキーとなる、ケン・リュウ「紙の動物園」を取り上げます。

 

[amazonjs asin=”4150121214″ locale=”JP” title=”紙の動物園 (ケン・リュウ短篇傑作集1)”]


中国系アメリカ人である著者が描く、ハーフの少年と中国人の母親とのメモリー。
 
友達がいない幼い息子に、母が与えてくれた相棒は、生き物のごとく吼え、跳ねる折り紙の虎。
 
成長して母を喪ってみて、あれはイマジナリ—フレンドの類だったのかと回想している所に再びボロボロになった折り紙を見つけた事からよみがえる、息子と母の過去の思い出。
 
数々の賞を総ナメにした現代ファンタジーの金字塔!
 
booklive
 
で、課題となる表題作はブラウザで無料で読めたりしますし、非常に短い作品なので未読の方はぜひご一読を。

参加申込はこちら⇒「参加申し込みについて」

レポート作成:はじめ