お彼岸を越えて収穫の秋。お祭りの鉦や太鼓も聞こえ始めた9月下旬。第18回 2nd Memory(セカンド・メモリー)が下記の内容で開催されました。

台風の直撃により、お店と参加者の方にお願いして、1週間スライドしての開催でした。台風が来た日なんかは、朝に「あれ曇り? もしかして開催できた?」と思っていましたが、お昼頃から雲行き妖しく土砂降り。悩んだらやめとくのが正解。

課題図書:「若きウェルテルの悩み」
[amazonjs asin=”4102015019″ locale=”JP” title=”若きウェルテルの悩み (新潮文庫)”]
会  場:珈琲哲學 高松店 14時ー16時
参 加 者:6名(男3・女3)スタッフ含む

満席御礼!

若き青年ウェルテルが出会った美しき女性、ロッテ。

彼女には婚約者があり、もうすぐ結婚してしまうーーウェルテルはその猛る胸のうちを友人に手紙でしたため、読者はその手紙を読むという書簡小説の体をとっています。

ドイツの誇る文学者ゲーテが、実際にこの小説のように夫のある女性に恋をし、そして失恋したのが9月という事で今月の課題としましたが、9月10日から世界自殺予防週間でした。。。文庫の裏表紙概要なんかに書いてますが、道ならぬ恋に破れたウェルテルはピストル自殺をしてしまいます。

今回はじめて読んだ人が2、はじめて読んだのはン10年前という人が4という構成でした。
私も学生の頃にちょろっと読んだくらいで、10数年ぶりにロッテ嬢と再会という形でした。毎日キシリトールガムは噛んでますが。。。香川県では高松駅にしかエビバーガー元祖のハンバーガー屋はありませんが、昔はさぬき市志度にもあったという思い出(メモリー)。いつの時代の話でしょう。

会を通じて出た感想・意見として・・・

・昔読んだときはよくわからない、といった感想だったが改めて読んでみると恋愛の悩み、一途な恋に共感できるが、「いま」の若者に奨められるかどうかは・・・。

・振られたからといって自殺に走るラストは信じられない。

・ウェルテルが病んでいる人のような印象。(いまならネガティブな胸の内はブログなんかで1人でカタカタ吐き出してればいいけれど、友人に宛てた手紙。受け取った側もきっとしんどいだろうな)

・手塚治虫の「火の鳥」にガラスのなかで培養された人工生命「ウェルテル」が登場し、一節を述べる。

・女性目線でロッテの事を考えると、ウェルテルは可愛い男の子。側に置いときたい。自殺してしまうほどのめり込まれるのは考えていなかったのでは。

発表された当時は、ウェルテルにシンクロして自殺に走る若者が急増。

精神医学でも後追い自殺が多発する事を、この事象になぞらえて「ウェルテル効果」と命名されています。

自分で自分を殺すとまではいかなくても、自分で仕事を辞めたりするのは現代に置いては特に珍しくもない行為ですが、なんのかんので皆、小さなことは我慢して生活している。(ウェルテルは人間関係が上手くいかないという理由でけっこう仕事変わってますが)国民的歌姫が引退を発表 → 後追い退職続出 となると、日本経済もお先真っ暗ですね。

作者であるゲーテ自身は手痛い失恋を経験してもご長寿で、老いても若い女の子とよろしくやっていたみたいです。作品のなかで、自己の肥大化した自我をウェルテルに投影し、一度殺すことによって気持ちの整理をしたのではないか・・・といった感想もありました。

先月の「高野聖」とも共通しますが、女性への憧れが信仰の領域にまで昇華されてしまう危険性、若さゆえに過ちでしょうか。名ばかり婚約者でロッテが「誰か私を攫ってぇぇぇ」ならまだしも、婚約者はウェルテルからしても好人物と映る紳士。自分と他人を比べてしまう苦悩というのもあったのかもしれませんね。

参加していただいたみなさん、どうもありがとうございました!



※秋の味覚・栗。モンブランのパンケーキ。おすすめ。

次回は10月15日(日)
梨木香歩「西の魔女が死んだ」を取り上げます。
[amazonjs asin=”4101253323″ locale=”JP” title=”西の魔女が死んだ (新潮文庫)”]

10月といえば、日本は神無月で出雲で神様たちの会合が行われますが、西洋ではハロウィン、魔女や悪魔の宴ーーという事で「魔女」を発想起点としての選書です。

魔女というと、三角帽子をかぶり、大鍋に妖しげなものを放り込んで「イーヒッヒッヒ」とかき混ぜてそうなイメージですが、実際は薬草知識とかが豊富な人。

いまでも脈々と受け継がれるその血を引く西から来た英国人の祖母を持つ、日本の少女「まい」の物語。

異質なものを排除しようとする現代社会に「魔女狩り」もまた形を変えて残っている現実。

既に満席御礼ですが、有名な作品ゆえ、手に入り易いと思うので未読の方は秋の夜長に鈴虫の鳴き声を聞きながら是非。

レポート作成:はじめ