すっかり春めいた、春分の日の前日、課題図書型読書会 2nd Memory が下記の内容で開催されました。

課題図書:「星の王子さま」
会  場:珈琲哲学高松店 14時ー16時
参 加 者:6名(男2・女4)スタッフ含む

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ひな祭りから、イメージを膨らませてのひな流しの連想からの選書でした。

 

 

今回も初参加の方をお迎えしての開催でした。世の中にたくさんの読書会がありますが、2nd Memoryを人生最初に参加する読書会に選んでいただけて嬉しいです。

 

気温も暖かくなってきたので、いつもはホットのアメリカンを注文している私ですが、ミックスジュースを頼みました。季節フェアーのイチゴ関連のメニューを注文されている方も多かったように思います。

 

私も会場予約のときに、男2人でイチゴのパフェをつついたりしました。男の子にとってカレー・ハヤシ・オムーーライスは「御三家」ハンバーグは「王さま」フルーツとチョコのパフェは「竜虎」ですが、季節メニューは食べたいときに食べないと次に訪れたときに消えてしまうーーまさに「たいせつなものは目には見えない」という事で、ゆるやかに読書会はスタート。

 

物語は、砂漠に不時着した飛行機のパイロットが出会った「小さな王子さま」。

 

いまでも飛行機のパイロットをはじめ、船舶の操舵士や鉄道や自動車の運転手などは「子ども」にとっての憧れの職業だったりしますが、ここではないどこかへ自分の意志で行くというのはひとつの願望なのかもしれません。

 

さて、王子はなんと6つの星を経由して、この地球にやってきた異星人。王子が自分の星で大事にしていた一輪のパラと別れを告げ、様々な「おとな」が住む星をめぐり、やってきたのが我々の住む地球。地球で出会ったヘビや枯れかけの花、満開のバラ、キツネといった動植物たちーーとパイロット。

 

冒頭でパイロットが王子と過ごした6年前を回想しているという事が述べられています。この作品では「6」という数字がひとつのキーとなり、王子とパイロットが6日をともに過ごし、7日目に・・・。

 

児童文学として書かれているものの、子どもには抽象的すぎてあまり理解できないのではという意見もありました。子どもの頃から親しんだ人もいれば、大人になって初めて読んだという人も。私も話の外枠は知っていても、しっかりと読んだのは数年前でしたでしょうか。なんとなく、おとなになってしまった、かつての「子ども達」宛なのかもしれません。

 

そして「恋愛」をキーに作品を眺めてみれば、ツンとすましたバラと王子。地球でたくさんのバラを見たときに、王子は一輪のバラが自分にとって「特別」なバラだったと気付くーー別れてから気付く大切さ、

 

砂漠で出会ったキツネが語る「目に見えないたいせつな物」ーーいきなり「仲良くやろうぜ」ではなく、ゆっくりと時間をかけて互いを知り、「もしきみが、たとえば午後4時に来るなら、3時からぼくはしあわせな気持ちになりはじめる」ーー交際へのプロセスと、デートの期待感を想像させました。

 

著者であるサン=テグジュペリについても、1900年ジャスト生まれのため、生涯が世界情勢の年表と照らし合わせやすい点が挙げられました。

 

「人間の大地」で描かれるように、自らも砂漠に不時着して生還したといった経験や、当時の無事に離発着できると保証されてるわけではない機体性能を鑑みるに、精神的に「死」に近しいがゆえに、抽象的なこの作品が産まれた可能性。

 

どの勢力下にあっても「夜間飛行」はパイロットたちにとってはバイブル的な一冊であったようです。案外、乗機に得意の絵でノーズペイントしておけば撃墜されなかった未来もあったやも・・・。

 

今回は様々な訳者の版が集いましたが、すべて共通していたのは「挿絵」も含めての収録である事。

 

挿絵と文章の融合。「たいせつなものは目には見えない」ことを念頭におき、最後と、そのひとつ前の挿絵を見ると・・・?

 

訳で面白い所として、日本で初期に紹介されたものでは、冒頭に登場するヘビは「うわばみ」とされたり、飛行機のエンジントラブルは「パンク」と表記されていたりと、当時の人にとって身近な言葉に置き換えられている工夫が見え隠れします。

 

児童文学とされていますが、おとなが読むとピュアな感性を刺激されること請け合い。
疲れて乾いた心も、文を読まずにパラパラと絵を眺めるだけでも砂漠のなかの井戸(オアシス)からわき上がる水のように、潤いに満たされるかも。

 

世界的ロングセラーだから、逆に敬遠しているといった人も、たいていどこの書店でも置いてある本なので、ぜひ手に取って貰いたい1冊です。

 

かつてウルトラの星やセーラー戦士に想いを馳せた少年少女の心をもって夜空を眺めれば、どこかに王子が暮らす星がさんさんと輝いている!

 

様々な「王子さま」がずらり。

今回は「サン=テグジュペリ」Tシャツ!

料理もホスピタリティも最高です!

 

次回は小川洋子「博士の愛した数式」を取り上げます。

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当読書会では、昨年の夏に開催した「猫を抱いて象と泳ぐ」に続いて2回目の小川作品です。

 

シングルマザーの家政婦の新たな勤務先の主人は老いた数学者・博士。叡智に富むが、過去の事故が原因で僅か数十分しか記憶(メモリー)がもたない。

 

毎日がはじめまして。

 

博士の厚意で、幼い小学生の息子は学校が終わると母の勤め先である、博士の家へ。特徴的な頭の形から「ルート」のあだ名を賜り、3人で楽しい時を過ごす。

 

小説という文字が紡ぎ出す、数学という世界の広大さ。

 

いまでは広く認知されてきている書店員が選ぶ文学賞「本屋大賞」の記念すべき第一回の受賞作。

 

お時間のあう方は、桜舞い散る日曜日の昼下がり、一緒にこの作品を楽しみましょう。

 

 

※次回は第1日曜日・4月2日の開催となります。

 

レポート作成:はじめ